学志入楽(慶應義塾大学通信教育課程)

思うところあり、慶應義塾大学通信教育課程(経済学部)に学士編入しました。志を持って楽しく学んでゆきたいと思います。

「福澤諭吉における政治と外交」受講

 いつも試験を受けに行く大阪シティキャンパスで「新・福澤諭吉論」の第2回、「福澤諭吉における政治と外交」を受講しました。講師は都倉准教授。

 まず、福澤諭吉が当時目指した社会像として確立した学問を何の疑いも無く覚え、改めない従来の儒学をメンタルスレーブとして批判していたこと、誰もが学問を学ぶことで自分を変えてゆく(学問の中身も)ことを文明主義と位置付け、あくまで教育・学問によって社会を変えてゆくのが福澤流だったとあった。

 福澤は多様で活発な議論と多元な価値を重視する一方、現実的思考をすることで社会(官民)の調和を重視しており、政治モデルとしてイギリス型(議院内閣制と政権交代の存在)を重視していたが、旧憲法ではプロイセン型の君主主権(官尊民卑)が導入されたという現実の中でどのような行動をすべきかに苦慮していたことが紹介されました。具体的にはそれまでの著書から新聞(「時事新報」)で現実論を扱い、プロイセンモデルが採用された国家統治機構の現実により文明主義的な社会をどう構築していくかを模索したとのことでした。話は外交と脱亜論にも及びました。面白かったのは外交を外国交際と位置付け、政治的なものだけでなく国際結婚なども視野に入れていたこと、多元な価値が融合することでその衝突も起こりうることを想定していたことでした。脱亜論について都倉先生は、甲申事変(1884)に関連したもので(1)清・朝鮮が引きずる儒教主義を批判したものである点、(2)当時の国際情勢に鑑み、日本政府の外交失政をフォローし、外交面での独立を発信したものではないかとのコメントがされました。総じて福澤は学問を通じた社会の構築を重視し、古い権威にすがって自身も学問内容も見直そうとしない姿勢を批判していたことが議論の軸にありました。

 慶大にとっての通信教育課程設置の意義も多数が学ぶ機会を提供することそのものが社会形成の一環だったということにあると学びました。また、配布資料に「西洋事情」の扉絵があったのですが、そこに既に「電気傳信」の文字があり、村井先生のような日本における情報学の代表的な先生が慶大にいらっしゃるのも単なる偶然ではないのだろうと感じたりしていました。